(市ヶ谷の一等地にひっそりと佇む日本棋院会館)
囲碁トモAさんのお供で、東京・市ヶ谷にある「日本棋院会館」に行くことになった。
日本棋院会館は囲碁の総本山日本棋院の本部ビルで、地上8階、地下1階の建物は「囲碁の殿堂」と呼ぶにふさわしい威厳がある。
(対局室のほか売店もある 地下には「囲碁殿堂資料館」という博物館も設置されている)
もっとも威厳はあるものの、竣工は1971年だから築後50年を経過しており、いかにも昔のビルといった雰囲気だ。
このビルが出来たころの我が国の囲碁人口は1200万人、碁盤と将棋盤はどこの職場にも普通に見られたものだった。
それが昭和から平成に代わる頃から、社員旅行やオフィス内での喫煙とともに職場での対局風景は姿を消してしまった。バブルの崩壊とともに「サザエさん」に出てくるような古き良き会社はこの世から消えたのである。
そんなこともあって囲碁人口は以降減少の一途をたどり、今ではわずか200万人程度と言われている。しかもこの数値はネット対局愛好者を含んだものだから、この40年間組合員数が減少し続けて、今や組織率が20%を割った日教組の惨状よりさらに酷い。
(今でも新卒教師の5人に1人が日教組に加入している、というのがむしろ驚きだ 読売新聞記事)
そんなわけで日本棋院の経営は火の車だから、ビルの改修にまで手が回らないのは当然といえば当然である。
もっとも藤井聡太ブームもあって愛好者600万人を誇る将棋連盟の総本山将棋会館も日本棋院会館以上にショボいから、ビルの改修に回すカネの余裕がないという点ではどっちもどっちだ。
用事をそそくさと終えた一行は昼メシへ。猛暑日のオフィス街は炎熱地獄の様相を呈している。
「どっかでビール飲みたいねえ」
「ひょっとして居酒屋系統の店ならランチビール出してくれるかもしれませんね」
ウロウロしていると、路地の奥に「あて」という店があった。どうやら魚中心の居酒屋らしい。
(この界隈では稀な一軒家居酒屋)
二階の座敷に通されて恐る恐るビールを頼んでみると、アルコール類は一切出していない、とのこと。
う~ん、残念。残念だが客に媚びない姿勢がなんとも清々しい。
やがて「メバルの煮付け」がやってきた。
(味がよく浸みていてメシが進む)
(お供の鶏南蛮漬け、お新香 これに味噌汁がつく)
オフィス街ということもあり、アルコールなしでは夜のお客さんはそれほど来ないだろう。
「そうなんです。ですから今は夜の営業は止めてます。当分昼一本です」
う~む。日本棋院の経営も心配だが、こっちはもっと心配だ。
夜の商売再開とともにもう一度足を運ぶことにして、帰路についた。
(どうか潰れませんように)